研究者らが選ぶ、
ポストパンデミックに
いま向き合いたい
マンガやゲーム②

 秋田書店

戦争めし
 魚乃目三太

選:村上祐資(極地建築家/FIELD assistant代表/SPACE FOODSPHERE理事)

僕は衣食住を、衣=異物の境界、食=異物を取り込む、住=異物を祓う、というように捉えています。今日の話でいうと、異物という今の不安定な世界でサバイブしてく上で、「衣」は役目や物語、「住」は個室やステージのに該当します。残る「食=異物を取り込む」ためのヒントがこの漫画にはあります。「食」が単なる栄養や味覚の摂取をこえて、「戦争」という受け入れがたい「異物」を、無名のごく普通の人たちが取り込んでいくプロセスの物語です。

Yusuke Murakami
1978年生まれ。南極やヒマラヤなど様々な極地の生活を踏査。2008年、第50次日本南極地域観測隊に越冬隊員として参加し、昭和基地に15ヶ月間滞在。The Mars Societyが計画を発表した長期の模擬火星実験「Mars160」では副隊長に選ばれ、2017年、模擬火星環境、米ユタ州ウェイネ砂漠のMDRS基地および北極圏デヴォン島のFMARS基地で、計160日間の実験生活を完遂。2018年「MDRS Crew191 TEAM ASIA」で隊長を務める。2019年には退役した元南極観測船を活用し、日本で初めての閉鎖居住実験「SHIRASE EXP.」を実施。

『あつまれどうぶつの森』
 任天堂

選:三宅陽一郎(ゲームAI開発者)

外出ができない現実空間では閉じられているが、インターネットのおかげでデジタル空間で言葉や音や映像というメディアを通じてつながっていられる。しかし、デジタル空間を使えば現実と違うチャンネルで現実にはないつながりを形成できる。それがオンラインゲームの良いところだが、通常のオンラインゲームでは「ロール」をかぶってロールプレイの中でコミュニケーションする。しかし、本ゲームは素の自分のままで、コミュニケーションできる。相手と、島の上で釣りをしたり、家具を見せ合ったり、果物をプレゼントしたり、仮想3D空間の中で新しい関係を結べる。

Yoichiro Miyake
2004年よりデジタルゲームにおける人工知能の開発・研究に従事。立教大学特任教授、九州大学客員教授、東京大学客員研究員。日本デジタルゲーム学会理事、芸術科学会理事。

エレクトリック・アーツ

『SimCity』
 エレクトリックアーツ

選:山本貴光(文筆家/ゲーム作家)

私たちは、世界中のさまざまな人や要素と直接・間接的に関わりながら生きている。パンデミックのような出来事によって、そうした関係が変化すると、日頃は意識されないことも目に入るようにもなる。例えば、政府のさじ加減一つで、私たちの生活にどれだけの影響が出るかを痛感している最中だ。都市を運営する『SimCity』で遊ぶと、自分のちょっとした決定が、人びとの暮らしにどんな影響を与えるかを疑似体験できるだけでなく、多様な要素が絡み合った世界のあり方を見る目も養える。

Takamitsu Yamamoto
コーエーでのゲーム開発を経てフリーランスに。学術史、技術と人間のインターフェイスについて探究中。立命館大学先端総合学術研究科講師、金沢工業大学客員教授。著作に『投壜通信』、『文学問題(F+f)+』、共著に『その悩み、エピクテトスなら、こう言うね。』(吉川浩満と)、『高校生のためのゲームで考える人工知能』(三宅陽一郎と)ほか。『文藝』、『数学セミナー』、『本の雑誌』で連載中。twitter.com/yakumoizuru

講談社

『EDEN It’s an Endless World!』
 遠藤浩輝

選:松原 仁(東京大学大学院 情報理工学系研究科教授)

硬質化ウィルスの流行によって人類の15%が死んでしまった近未来を描いたマンガで、現在の状況を予知していたかのように思える。政治、経済、戦争、宗教などが複雑に入り組んだ世界の中での人間の生と死がテーマになっており、決して気楽に読めるタイプのマンガではないが傑作である。ちなみにAIも重要なトピックでフレーム問題も登場する。

1986年東大大学院情報工学専攻博士課程修了。同年電子技術総合研究所入所。2000年公立はこだて未来大学教授。2020年東京大学大学院教授。専門は人工知能。著書に『鉄腕アトムは実現できるか』『AIに心は宿るのか』など。元人工知能学会会長。

トランスフォーマー

『ババドゥック 暗闇の魔物』
 ジェニファー・ケント

選:中川真知子(ライター)

映画『ババドゥック』からは、見えないものや都合の悪いものは存在しないと怯えているうちは自分を苦しめるけれど、存在を認めて「飼いならせば」心の平安をとりもどすことができることを学べる。新型コロナに当てはめて考えるなら、「Withコロナ」の上をいく「Tameコロナ」精神と言えるかも。さて、私たち人間はコロナを飼いならすために、どんな工夫ができるのでしょうか。

Machiko Nakagawa
映画やガジェットを勢いと愛情を込めて伝えるライター。好きな映画ジャンルはホラーとサスペンス、SF、動物もの、犯罪ドキュメンタリー。監督、プロデューサー、俳優らのインタビューも担当。過去17年間で5ヵ国に引越し、各国で得た知識や経験を元にライフスタイル記事も書く。

法政大学出版局

『暴力と聖なるもの』
 ルネ・ジラール・著/古田幸男・訳

選:橋迫瑞穂(立教大学社会学部兼任講師)

本作はルネ・ジラールが「供犠」に注目して、暴力が発生する社会構造について論じたものである。端的に言えば、わたしたちの社会はいけにえに暴力を集中させることで、共同体そのものを維持することができるとする内容である。興味深いことに、暴力の効果をワクチンと細菌の関係にも見出している。ポスト・パンデミックにおいては、その中で露わになった差別や排除について、すなわち「いけにえ」を生み出す社会構造に正面から向き合わねばならない。この本は、重要な手がかりになるだろう。

Mizuho Hashisako
専攻は宗教社会学。スピリチュアリティとジェンダーについて研究を進めている。主な著作に『占いをまとう少女』(青弓社)、博士論文『現代日本社会における宗教と暴力』など。

講談社

『ウイルスは生きている』
 中屋敷均

選:森川幸人(モリカトロン株式会社 AI研究所所長)

「我々はすでにウイルスと一体化しており、ウイルスがいなければ、我々はヒトではない」

ウイルスというと新型コロナウイルスをはじめ、ノロウイルス、インフルエンザウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(AIDSウイルス)など、人に害を及ぼす「悪い奴」というイメージが強いが、すでに我々人間のDNAの中にもたくさんのウイルス由来の遺伝子が組み込まれていて、それらのおかげで、我々の進化を進めているという一面もある。「ウイルスとの共存」という新しい視点を与えてくれた本。

Yukihito Morikawa
筑波大学芸術専門学群卒業。ゲームAI設計者、グラフィック・クリエイター。モリカトロン株式会社AI研究所所長。筑波大学非常勤講師。
20年前よりAIを使ったビデオゲームを制作。代表作は『がんばれ森川君2号』、『アストロノーカ』、『くまうた』。著書に『マッチ箱の脳』『テロメアの帽子』、『ヌカカの結婚』、『絵でわかる人工知能』(共著)、『イラストで読むAI入門』など。2004年『くまうた』で文化庁メディア芸術祭 審査員推薦賞、2011年『ヌカカの結婚』で第一回ダ・ヴィンチ電子書籍大賞大賞受賞。

編集:高橋未玲、塚田有那

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